さっそく、キッチンスタジオにやって参りました。

ここで生八つ橋を様々な方法で調理し、生じゃなくしていきます。
それが今回の企画の目的になります。
京都のお土産に買ってきた「聖護院八つ橋」を使用
生(き)
まずはこちらの生(なま)八つ橋を生(き)でいただきます。
生じゃない状態の生八つ橋を評価するには、生の状態の味も確かめておかねばなりませんからね。




もうこれでいいんじゃね……?
もう完成されてるじゃん。
あんこの甘さも、シナモンの香りも完璧だよ。
あんことシナモンを完璧にするための皮じゃん。
これに手を加えたら、このバランスが崩れるんだよ?

まぁ、たしかに? それを疑わないと、新たな可能性なんて広がらないけどさ。わかってるよ? 企画の趣旨の全否定だって。
でもさぁ……。
これより上があるとは思えない
まぁ、スタジオのレンタル料もタダじゃなかったし?
ちょっとだけ、ちょっとだけだよ? まぁ、やってみないとわかんないとこもあるのはわかるからさ。
焼き
てなわけで、まず「焼き」に挑戦
無論、生八つ橋には「その先」のレシピなど存在しませんので、探り探りで火を通していくことになります。

そして私は野菜炒めにすらクックパッドを必要とする超絶料理初心者。
焼き色などで具合を判断する勘は少しも備わっていません。
フライパンの底に皮が引っ付くことすら予想できていない
ひっくり返すときに1度、皿に移すのにもう1度やけどをしながらも、やっとこさ「焼き」処理が完了。
完成品がこちらになります。
大丈夫……?
見た目は胞子を吹き終えたキノコのような有様になってしまいましたが、想像以上に甘くて香ばしい匂いがただよっています。
それでは、一口……。


おっ……?
いけるじゃん……!
それに、焼いた意味がある!
焼いたおかげで皮がしっかりしてちゃんと焼き菓子らしさが出ているうえ、シナモンの持ち味も損なわれていない!
あんこがややくどく感じるところもあるがおおむね……。
いい感じ!
私の技術の将来性も加味して100点満点中
『75点』
とさせて下さい。
なんだなんだ、どうせ生のままが一番だろうと不安になっていましたが、意外といけそうじゃないですか。
今日用意した「調理法」はまだまだあります。
どんどん試していって、真に「生よりも美味い」八つ橋を探していきましょう。
炙り

次は「炙り」に挑戦です。
料理経験が浅すぎる僕がバーナーなんて持つと危険極まりないので、ここはダイソーで買った強いアウトドア用ライターで代用します。

さぁ、しめ鯖に焼き色をつけるみたいに、大胆にやっていきましょう。

……変わった?
だいぶ目前で火はぶつけたので大丈夫でしょう。
仮に火が通ってなかったとしても、生八つ橋は生で食べられます。
ふむ……
あ~、これ同じだ
味もほとんど変わりません。
皮の表面を炙っただけでは食感もちょっと固くなっただけにとどまってしまいましたね。
生八つ橋としての殻を破るには、もっと大なたを振るう必要があるのでしょう。
こちらは
『45点』
といたします。
じゃあ、どんどんやっていきましょう。
蒸し
今度は「蒸し」に挑戦します。
フライパンに底が厚い器をひっくり返し
その上に皿をおいて八つ橋をセット
これならば蒸し器がなくてもしっかり蒸すことができるはずですが、どうでしょうか?
おっ
良い感じじゃない? どれどれ……
えっ……!?
ビショビショじゃない!?
蓋の水滴が落ちてきてしまったのでしょうか。
でもまぁ、しっかり火は通ってそうですから、肝心なのは味です。
味は……やるやん!
中々に美味しいです。
皮がよりもっちりに、あんこもホクホクして甘みが際立っています。
ごま団子みたいなジャンルに近づいた感じですかね。
『80点』!!
炒め
次は「炒め」です。
さっきの「焼き」のフライパンに油を入れる
カス料理人の私は、油の量や温度の調節に全く気が回らないまま、フライパン上の八つ橋を炒め上げます。
過程はよかったけど……
できあがりはテラッテラやんけ
気になるお味は……?
まぁまぁ!
焼きとあんまり変わらないですが、シナモンが油と一緒に流れちゃってます。
脂味は思いのほかクドくなく美味しく感じましたが、新規性はないかな……。
というわけで
『65点』
とさせていただきます。
茹で
次は「茹で」。
蒸しでは不本意にビシャビシャにしてしまいましたが、今度はしっかりと湯に沈めていきます。

なんか時間がたつと表面の薄皮?のようなものが浮き出してきました。
おそらく、粉がまぶされて乾燥していた皮の表層が、茹でたことではがれてしまったのでしょう。
あまりいい光景ではありません。

しばらくして煮立ったら箸で引き上げます。
つきだしで出たのにちょっとだけ手をつけられて終盤まで残った刺身こんにゃく?
またしても最悪の見た目ではありますが、正直そこは私のスキルの問題です。
何度も言っていますが問題は味。いざ実食です!
あれ?
マジ!?!?
めっっっっっっちゃ美味い!!!!
ぶっちゃけ、生(き)の生八つ橋より好きというか、完全に別の立ち位置を確立したお菓子になっています。
この皮の食感と風味、なんて表現したらいいんですかね。
スーパーとかで売ってるまっ透明なわらび餅あるじゃないですか?
あのほのかな甘さに近いっていうか。
湯で完全に流れると思っていたシナモンの味わいも、皮によって良い具合に保持されていて、絶妙なアクセントになっています。
湯に漬けたことによるあっさり感も、八つ橋を食べまくって血糖値が上昇してきた私のお腹にとても優しくてGOOD!
ガツガツいけちゃう
これは聖護院八つ橋さんも商品化できるんじゃないですか?
店舗メニューとかで出してさ、ほうじ茶といっしょにいただくのよ。
まさかの大躍進。これは文句なしの
『100点』
でしょう。
揚げ
最後に残った調理法は「揚げ」です。
今までのものより手間がかかる分味の予想がつかないのはもちろん、家庭科の調理実習でお吸い物のみを作らされていた過去をもつ料理下手の私にとっては、あまりに危険なチャレンジです。
5年ぶりの運転で高速道路の合流をするぐらいには危険です。
火事にだけは気をつけて参りましょう。
卵を割り……
とき……
衣をつけ……
揚げるっ!
お~~~~!
本当にいい音で揚がっていきます。面構えはしっかり揚げ物ですね。

ここにきて、一番見た目がいい「生じゃない」八つ橋の完成です。
ハモのフライみたいですね。
というわけで実食……!

うまいっ!!
これはかなりの傑作です!
全体的に火が通って甘さのまとまり自体は「焼き」に近いのですが、秀逸なのは芳香と舌触り。
衣があることによってシナモン臭が閉じ込められ、噛むと口の中に広がっていきます。
そして衣のサクサク感は生(き)の八つ橋ではとうてい考えられない楽しさ。
牡蠣フライ食感の揚げまんじゅうといった趣で、とても美味しく仕上がりました。
これも満点……といきたいところですが、味付けの部分で改良の余地がありそうなので、期待もこめて
『90点』
をつけさせていただきます!
てな感じで、生八つ橋をひたすら生じゃなくしていきましたが、新しい可能性を大いに開拓することができました。
各種調理法の点数も、予想していたよりもずっと高く出ています!

特に「茹で」に関しては「煮わらび餅」みたいな新ジャンルの開拓を予想させる味わいでしたね。
これだけ発展の余地があるということは、やはり生八つ橋は正真正銘「生」の食べ物なのでしょう。
ひとまず私は、爆上がりした血糖値を抑えるためにそこらを走ってきます。
あれだけ食べたら頭いてぇ
皆様も、ぜひ生じゃない八つ橋の可能性について検討してみてください。
血糖値スパイクにはくれぐれもご注意を。
1箱丸々食べたら、体の中で八つ橋が毒に転じる感覚が分かりますよ。
それでは。
編集部からのみどころを読む
編集部からのみどころ
こちら月刊新人賞の優秀作品です。
シャカ夫さんはいつも惜しい作品を送ってきていて、直接編集したいなと思っていたのですが、今回はスカッとテーマ選び・展開・言い回し・表情が決まった作品を送ってきてくれました。文句なしの掲載です。
「もうこれでいいんじゃね?」という素直な感想から始まって、ぐだぐだで終わるのかと思ったら後半で成功する流れもきれい。話し言葉に近い文章もデイリーにない読みやすさで嬉しいです。(林)